【Will&Nexus 27/49】変化に反対する人を、責めてはいけない理由。

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「なぜ反対するんだ」

新しい施策を提案したとき、必ず反対する人がいる。

「今のやり方で問題ないのに、なぜ変える必要があるのか」 「リスクが大きすぎる」 「現場の負担を考えているのか」

提案する側からすれば、苛立つ。明らかに改善なのに。データもある。ロジックも通っている。なのに、反対される。

別の記事で「正しいだけでは人は動かない」と触れている[※1]。ここでは、反対する側の心理構造をもう少し掘り下げてみたい。


変化=脅威、という脳の設計

人間の脳は、変化を脅威として処理するようにできている。

進化の過程を考えれば当然だ。未知の環境は危険だった。慣れた場所、慣れた行動パターンから離れることは、生存リスクを高めることだった。

だから、脳は「今の状態を維持しよう」とする。これがホメオスタシス(恒常性維持機能)だ。体温を一定に保つのと同じように、心理的にも「今の安定」を保とうとする。

組織の中で「変化に反対する人」は、多くの場合、脳の防衛本能に従って合理的に行動しているだけだ。

わがままでもない。頭が固いわけでもない。変化が自分の「今のハッピー」を脅かすと感じているから、防衛しているだけだ。


反対派が守っている「均衡」

もう少し踏み込もう。

反対する人は、何を守っているのか。

今の均衡だ。

記事14[※2]で書いた通り[※2]、人は無意識のうちに、自分の中で均衡を作っている。今の仕事のやり方、今の人間関係、今の評価のされ方。それらが一応のバランスを保っていて、大きな不満はない。

そこに変化が来ると、その均衡が崩れる可能性がある。崩れた先に何があるかわからない。わからないことは怖い。

反対の正体は、「変化の内容」への反対ではなく、「均衡が壊れることへの恐怖」であることが多い。

これに気づくだけで、反対派への向き合い方が変わる。


反対派を「敵」にしない

反対派を敵として扱うと、何が起きるか。

対立構造ができる。「改革派」と「守旧派」。推進する側と抵抗する側。こうなると、エネルギーの大部分が「相手を打ち負かすこと」に使われる。

でも、均衡の設計[※2]で書いた通り、相手のWillを押さえ込む構造は持続しない。

反対派は、押さえ込んでも消えない。表面上は従っても、心の中で抵抗し続ける。実行段階でブレーキがかかる。静かにサボタージュする。

反対派を敵にする設計は、エネルギー効率が最も悪い設計だ。

では、どうすればいいか。


恐怖の構造を理解する

まず、反対派が何を恐れているかを特定する

別の記事で触れる三つの問い[※1]——「相手が一番怖いことは何か」——をここで使う。

「今の仕事のやり方が変わって、自分の経験が通用しなくなるのが怖い」。 「新しい制度で、自分の評価が下がるのが怖い」。 「慣れたチームが解散させられるのが怖い」。

恐怖の内容がわかれば、その恐怖を取り除く構造を設計できる

「新しいやり方でも、あなたの経験は活きる。むしろ、こういう形で活きる」と伝える。「新しい評価制度では、あなたがやってきたこの部分が、より正当に評価される」と示す。

反対派のWillを殺すのではなく、変化の先にも反対派のWillが活きる構造を見せる。これが、設計者のアプローチだ。


「わかる」だけで、半分解決する

もう一つ、実務的に大事なことがある。

反対派の恐怖に対して、「その気持ちはわかる」と認めるだけで、抵抗が半分くらい減ることがある。

人は、「自分の恐怖を理解されている」と感じると、防衛本能が少し緩む。「この人は自分を打ち負かそうとしているのではなく、自分の状況を理解しようとしている」と感じると、対話の余地が生まれる。

これは迎合ではない。相手の恐怖を認めた上で、「でも、こういう理由で変化が必要だと考えている」と伝える。順序が大事だ。

先に恐怖を認め、次にビジョンを語る。 この順序を逆にすると、ビジョンは届かない。


変化のスピードを設計する

最後に、もう一つの視点。

変化のスピードそのものが、反対の大きさを決める

一度に大きく変えようとすると、脳の防衛反応は最大になる。でも、小さな変化を段階的に入れていくと、脳は適応する余裕ができる。

記事25[※3]のシーケンシング[※3]で書いた通り、小さな成功を先に作る。成功体験が一つあれば、「次の変化も大丈夫かもしれない」と脳が学習する。

反対派は、変化そのものに反対しているのではない。変化のスピードと、変化の先にある不確実性に反対している。

スピードを調整する。不確実性を減らす情報を出す。この二つだけで、反対は驚くほど小さくなることがある。

反対する人を理解できたとき、怒りは消える。構造が見えるからだ。そして、構造が見えれば、設計できる。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学大学院 理工学研究科 前期博士課程修了。

新卒から総合コンサルティングファームに入り、約6年ITや業務のコンサルを行う。研修会社に転職し、研修講師・企画等を行ったのち、人事領域全般に関わる、人材紹介会社グループのコンサルティングファームに。社内から組織や人材を良くしたいという希望から、事業会社で人事責任者などを経験。

趣味は多岐にわたる。断続的に続いているものだけでもゲーム(特にRPG, ドラクエシリーズ)、小さい頃から好きだった音楽(特に歌うこと)、社会人になってからフィットネスクラブ通い、コロナになってから始めた写真などは今も断続的に行っている。

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