【Will&Nexus 31/49】大学院を留年した日、僕は初めてゴールを見つけた。

目次

現状の延長線上に、ワクワクはない

「3年後にどうなりたいですか?」

キャリア面談や自己分析で、よく聞かれる問いだ。

多くの人は、こう答える。「今の仕事をもう少し上手くこなせるようになりたい」「今のポジションの延長で、マネージャーになれたら」。

堅実な答えだ。でも、その答えを言ったとき、胸の奥にワクワクがあるだろうか。

多くの場合、ない。

なぜか。現状の延長線上の目標は、「頑張ればたどり着けそうなところ」に置かれているからだ。安全だ。現実的だ。でも、エネルギーが湧かない。

本物のWill[※1]は、現状の延長線上にはない。


「現状の外側」にゴールを置く

コーチングの世界に、こういう考え方がある。

ゴールは、現状の外側に置く。

「現状の外側」とは、今の自分の能力や環境の延長では到達できないところだ。「今の自分には無理だ」と感じる場所。

「そんなの非現実的じゃないか」と思うかもしれない。

でも、ここに面白い逆説がある。

現状の外側にゴールを置いたとき、エネルギーが湧く。 現状の延長線上にゴールを置いたとき、エネルギーは湧かない。

なぜか。現状の延長は、脳にとって「すでに知っている世界」だ。新鮮さがない。ドーパミンが出にくい。

一方、現状の外側は、脳にとって「未知の世界」だ。そこには可能性がある。期待がある。記事12[※1]で書いた「内発的動機」は、未知の探索から生まれることが多い。

「無理だ」と思う地点にこそ、本物のWillが反応する場所がある。


本物のWillと借り物のWillの再確認

ただし、注意が必要だ。

「現状の外側のゴール」と「他人に植え付けられた野望」は、見た目が似ている。

「年収を倍にしたい」。これは本物のWillか、借り物のWillか。

記事12[※1]と記事15[※2]で書いた通り[※2]、見分け方はシンプルだ。

「報われなくても、認められなくても、そこに向かいたいか?」

年収が倍になっても誰にも言えない世界で、それでも目指すか? 答えが「はい」なら、Will寄り。「いいえ」なら、エゴか借り物の可能性が高い。

本物のWillに基づくゴールは、行為そのものに惹かれている。借り物のゴールは、行為の結果(ステータス、承認、証明)に惹かれている


「臨場感」がエネルギーを生む

現状の外側にゴールを置く。本物のWillに基づいている。

では、そのゴールに向かうエネルギーは、どこから来るのか。

答えは、臨場感だ。

臨場感とは、まだ実現していない未来の状態を、あたかもすでにそうであるかのように感じる力のことだ。

たとえば、「いつか自分の考えを本にまとめたい」と思っている人がいるとする。

「いつか書けたらいいな」と漠然と思っているときは、エネルギーは湧かない。でも、実際に書き始めて、章立てを考えて、最初の一行を書いたとき、「これは本当に本になるかもしれない」という臨場感が生まれる。その瞬間、エネルギーが変わる。

臨場感が高まると、脳は「現在」と「未来のゴール」の差分を「解消すべきギャップ」として認識する。 そして、そのギャップを埋めるための情報やアイデアを、自動的に拾い始める。

これは記事32[※4]で詳しく書く「認知の監査」の話と深く関わる。


「レールを降りた日」と「苦手に飛び込んだ日」

僕自身の体験を二つだけ書いておきたい。

一つ目は、大学院時代の留年だ。ずっと親の敷いたレールの上を走ってきた。でも大学でバレーボールにのめり込み、仲間との時間を優先した結果、研究がおろそかになり、留年が決まった。

最初は焦りしかなかった。「留年してはいけない」「周りに迷惑をかけている」。でも、留年を受け入れた瞬間、びっくりするほどスッキリした。

あのとき僕は、初めて「自分の人生を自分で選ぶ」ということをした。それまでは環境が用意した選択肢の中で最適解を選んでいただけだった。レールを降りたことで、初めて「自分のWillで歩く」感覚を知った。

二つ目は、社会人になってから苦手なことに飛び込んだ経験だ。体育の成績は5段階の2か3。美術もそう。他の教科は4か5を取れたのに。でも、格闘技系エクササイズのインストラクター資格に挑戦した。試験は一度落ちた。丸暗記は苦手だし、筋力面でも苦戦した。2回目でなんとか形にした。研修講師も初回で大コケした。でも、「先生になりたい」というずっと前からあったWillが、そこに向かわせた。

能力は足りなかった。でも、Willがあったから飛び込めた。そして飛び込んでみたら、3ヶ月でなんとかなった。能力が先ではない。Willが先なのだ。


今の能力は関係ない

最後に、一つだけ大事なことを。

ゴールに向かうエネルギーは、今の能力とは関係ない。

「今の自分にはスキルが足りない」「経験が足りない」。だからゴールに向かえない。

この思考は、ゴールの位置を今の自分の能力に合わせて下げているだけだ。

能力は後からついてくる。ゴールに向かって動き始めたとき、必要な能力は道中で身につく。なぜなら、ゴールに臨場感を持つと、脳が「そこに到達するために必要な情報」を自動的に拾い始めるからだ。

記事05[※3]でペンギンの話を書いた[※3]。ペンギンはペンギンのまま、飛行機を造ればいい。飛行機の造り方を全部知ってから着手する必要はない。まず「どこに行きたいか」を決める。造り方は、決めた後に見えてくる。

「理想の自分」に座標を置いた瞬間、エネルギーは湧き出す。 今の自分を起点にするのではなく、未来の自分を起点にする。それが、設計者のゴール設定だ。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

慶應義塾大学大学院 理工学研究科 前期博士課程修了。

新卒から総合コンサルティングファームに入り、約6年ITや業務のコンサルを行う。研修会社に転職し、研修講師・企画等を行ったのち、人事領域全般に関わる、人材紹介会社グループのコンサルティングファームに。社内から組織や人材を良くしたいという希望から、事業会社で人事責任者などを経験。

趣味は多岐にわたる。断続的に続いているものだけでもゲーム(特にRPG, ドラクエシリーズ)、小さい頃から好きだった音楽(特に歌うこと)、社会人になってからフィットネスクラブ通い、コロナになってから始めた写真などは今も断続的に行っている。

目次